ある百貨店に、いつものようにトイレを借りようと入っていき、華やかな化粧品売り場を通り抜けようとした。
その時急に声をかけられた。振り返ると美しい美容部員の方だった。一瞬誰かわからなかったが、二瞬で誰かわかった。
一年くらい前からニキビの漢方薬を取りに来ている女性で、タレントにでもなったらいいのにと思うくらい整った女性に似つかわしくないくらい、元気で赤いニキビが一杯出来ていた。
漢方薬がよく効いてどんどん良くなり、最近は思い出したようにやってくる。かつて数えるのが面倒なくらいあったのに、今は一つできても気になるのだろう、そんなタイミングで来ていた。
ただその日すべてが分かった。
有名百貨店で有名化粧品の美容部員をやっているから、顔の美しさは至上命題だったのだろう。
ああ、こんなに役に立っていたんだと嬉しかった。
他の美容部員がいる中、ブースから大きな声で僕を呼びながら出て来てくれた天真爛漫さで、心まで元気になってくれていることを、これまたうれしく思った。