僕が不思議がってはいけないが、不思議がったのは人間のすごさ。僕が調剤した漢方薬のことではない。僕はただ求めに応じて、夜中に大便が出る。夏でもカイロを体中に張ると言う摩訶不思議な不調をとってあげたかっただけだ。使った漢方薬も薬局製剤で、しばしば用いられるごくありふれたもの。
3年前に膀胱がんになってからこのような不思議な不快症状が現れるようになったのか、もともと不可思議な不調を持っていたから膀胱がんになったのか分からないが、手術以来3か月ごとに内視鏡検査をして、新たにできる癌を切除し続けているらしい。
今年の3月から人の紹介で相談に来られ、薬局製剤の煎じ薬で、まず単純に手術で落とした体重10Kgをとり戻していただくようにした。
2週間分ずつ取りに来ていただいているが、元気になって必需品だったカフェイン入りの栄養ドリンクを飲まなくても仕事が出来るようになった。耳の聞こえが良くなった。食欲が出た、ウンチに粘液が混ざらなくなった。と来られるたびに改善していき、5月には定期健診で、癌の摘出を先生が迷いながら取りやめて様子を見ようと言うことになった。
そして今日、とてもにこやかな顔をして入って来られ、化粧箱に詰めたお菓子?を下さった。いやしい僕はすぐに箱を開けてみたのだが、一見シュークリームに見えた。ところが昼休みにコーヒーとともに頂くときにパンだと分かった。どう見てもシュークリームの包装なのだが「岡山木村屋のひんやりクリームパン」と書いてあった。
よかった。足の速そうなシュークリームを家族で分けて食べても、1日に2個か3個食べなければならない。せっかく虫歯なし期間を更新しているので、ここで躓きたくなかった。だからパンと分かったときに心の障壁がとれた。
「食べるぞ~」ブラックのコーヒーでいただくと、罪悪感で苦しむことなく本当に美味しくいただけた。プロなら簡単に思いつきい作れるのだろうが、ほとんど早い者勝ちだろう。多くの方が好きなものを単純に組み合わせただけのものだから。
いつも病院の後にお茶をするお店がこのパン屋さんみたいで、「今日の検診では一切何もなくて、先生の説明も一瞬で済んで、それが嬉しくてうれしくて涙が出ました」と、僕へのお礼を買ってきてくださったみたいだ。
僕が作ったのは薬局製剤の中のある処方。ただ単純に元気にする処方。それで腫瘍まで出来なくすることが出来るのだから、人がもっている自然治癒力のすごさにひたすら驚かされたし、目の前で涙ぐんで喜んでいただけるような光栄をもたらせてくれた、僕の亡き漢方の師匠に感謝だ。
何ら偉ぶることなく、面白くて面白くて、生薬学でも留年したような僕に、「効く漢方」を教えてくださった先生に感謝。